障害基礎年金の受給権を持っている方(過去に障害等級2級以上に該当したことがある方)に、新たに別の障害(後発障害)が発生した場合は、後発障害について障害年金を請求することにより、既存の障害の程度と後発障害の程度を併合して障害の程度が認定され、場合により障害等級が改定されます。この時、後発障害が2級以上に該当する場合は「併合認定」が行なわれ、後発障害が3級以下(3級不該当を含む)に該当する場合は「併合改定」が行なわれます。
併合改定となる場合は、従前の障害年金の受給権がそのまま存続し、該当する障害等級の変更に伴い年金額のみ変更されます。
併合認定となる場合は、従前の障害年金の受給権は消滅し、新たに障害年金の受給権が発生します。
よって、後発障害に対する障害年金請求時に、再度「子の加算額」又は「配偶者加給年金額」の受給要件該当可否を確認することになります。
2つ以上の障害がある場合の障害の程度の認定は、次による。
同一部位に障害が併存する場合に生じることがあるが、国年令別表、厚年令別表第1又は厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失うことのないよう認定する。
認定の対象となる内科的疾患が併存している場合については、併合(加重)認定の取扱いは行わず、総合的に判断して認定する。
併合認定となる場合は、従前の障害年金の受給権は消滅し、新たに障害年金の受給権が発生します。
よって、後発障害に対する障害年金請求時に、再度「子の加算額」又は「配偶者加給年金額」の受給要件該当可否を確認することになります。
- 基本的事項
1.併合(加重)認定
併合(加重)認定は、次に掲げる場合に行う。
- 障害認定日において、認定の対象となる障害が2つ以上ある場合(併合認定)
- 「はじめて2級」による障害基礎年金又は障害厚生年金を支給すべき事由が生じた場合(併合認定)
- 障害基礎年金受給権者及び障害厚生年金受給権者(障害等級が1級若しくは2級の場合に限る。)に対し、さらに障害基礎年金または障害厚生年金(障害等級が1級若しくは2級の場合に限る。)を支給すべき事由が生じた場合(加重認定)
- 併合認定の制限
2.総合認定
内科的疾患の併存している場合及び前章の認定要領において特に定めている場合は、総合的に認定する。
3.差引認定
- 障害認定の対象とならない障害(以下「前発障害」という。)と同一部位に新たな障害(以下「後発障害」という。)が加わった場合は、現在の障害の程度から前発障害の障害の程度を差し引いて認定する。
- 同一部位とは、障害のある箇所が同一であるもの(上肢又は下肢については、それぞれ1側の上肢又は下肢)のほか、その箇所が同一でなくても眼又は耳のような相対性器官については、両側の器官をもって同一部位とする。
- 「はじめて2級による年金」に該当する場合には、適用しない。
- 併合(加重)認定
1.2つの障害が併存する場合
個々の障害について、併合判定参考表(別表1)における該当番号を求めた後、当該番号に基づき併合[加重]認定表(別表2)による併合番号を求め、障害の程度を認定する。
【認定例】
右手のおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃し、両眼の視力が0.1になった場合併合判定参考表によれば次のとおりである。
併合(加重)認定表により、上位の障害6号と下位の障害7号の併合番号4号を求め、2級と認定する。
右手のおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃し、両眼の視力が0.1になった場合併合判定参考表によれば次のとおりである。
部位 | 障害の状態 | 併合判定参考表 |
右手の障害 | 右手のおや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの | 7号—5 |
両眼の障害 | 両眼の視力の和が0.1以下に減じたもの | 6号—1 |
併合(加重)認定表により、上位の障害6号と下位の障害7号の併合番号4号を求め、2級と認定する。
2.3つ以上の障害が併存する場合
併合判定参考表の「障害の状態」に該当する障害を対象とし、次により認定する。
- 併合判定参考表から各障害についての番号を求める。
- (1)により求めた番号の最下位及びその直近位について、併合(加重)認定表により、併合番号を求め、以下順次、その求めた併合番号と残りのうち最下位のものとの組合せにより、最終の併合番号を求め認定する。
【認定例】
左下肢を大腿部から切断し、両眼の視力が0.1になり、右上肢のひとさし指、なか指及び小指を近位指節間関節より切断し、さらに、左上肢のおや指を指節間関節より切断した場合併合判定参考表によれば、次のとおりである。
併合(加重)認定表により、3位の障害7号と4位の障害9号の併合番号7号を求め、次に同表により、これと2位の障害6号との併合番号4号を求め、さらに同表により、これと1位の障害4号との併合番号1号を求め1級と認定する。
左下肢を大腿部から切断し、両眼の視力が0.1になり、右上肢のひとさし指、なか指及び小指を近位指節間関節より切断し、さらに、左上肢のおや指を指節間関節より切断した場合併合判定参考表によれば、次のとおりである。
部位 | 障害の状態 | 併合判定参考表 |
左下肢の障害 | 一下肢を足関節以上で欠くもの | 4号—6 |
両眼の障害 | 両眼の視力の和が0.1以下に減じたもの | 6号—1 |
右手の障害 | ひとさし指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの | 7号—4 |
左手の障害 | 一上肢のおや指を指節間関節以上で欠くもの | 9号—8 |
併合(加重)認定表により、3位の障害7号と4位の障害9号の併合番号7号を求め、次に同表により、これと2位の障害6号との併合番号4号を求め、さらに同表により、これと1位の障害4号との併合番号1号を求め1級と認定する。
3.併合認定の特例
(1) 併合(加重)認定の対象となる障害の程度が、国年令別表、厚年令別表第1、厚年令別表第2に明示されている場合又は併合判定参考表に明示されている場合は、併合(加重)認定の結果にかかわらず、同令別表等により認定する。
【認定例1】
左下肢の5趾を失った後、さらに右下肢の5趾を失った場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級となるが、国年令別表の2級11号に「両下肢のすべての指を欠くもの」と明示されているので、併合認定の結果にかかわらず、2級と認定する。
左下肢の5趾を失った後、さらに右下肢の5趾を失った場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
部位 | 障害の状態 | 併合判定参考表 |
左足ゆびの障害 | 一下肢の5趾を中足趾節関節以上で欠くもの | 8号—11 |
右足ゆびの障害 | 一下肢の5趾を中足趾節関節以上で欠くもの | 8号—11 |
併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級となるが、国年令別表の2級11号に「両下肢のすべての指を欠くもの」と明示されているので、併合認定の結果にかかわらず、2級と認定する。
【認定例2】
右上肢のおや指及びひとさし指と、左上肢の小指以外の4指の用を廃したものに、さらに右上肢のおや指及びひとさし指以外め3指と、左上肢の小指の用を廃した場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
すでにある障害について、併合(加重)認定表により併合し、併合番号7号となり、障害等級3級となっているものに、さらに、併合判定参考表の10号に該当する障害と併合判定参考表に明示されていない程度の障害が加わったものであるが併合判定参考表の2級3号—3の「両上肢のすべての指の用を廃したもの」に該当するので、併合認定の結果にかかわらず2級と認定する。
(2) 併合(加重)認定の結果が、国年令別表、厚年令別表第1又は厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失する場合右上肢のおや指及びひとさし指と、左上肢の小指以外の4指の用を廃したものに、さらに右上肢のおや指及びひとさし指以外め3指と、左上肢の小指の用を廃した場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
部位 | 障害の状態 | 併合判定参考表 |
右手の障害 | 一上肢のおや指及びひとさし指の用を廃したもの | 8号—9 |
左手の障害 | おや指及びひとさし指を併せ一上肢の4指の用を廃したもの | 7号—5 |
右手の障害 | おや指及びひとさし指以外の一上肢の3指の用を廃したもの | 10号—13 |
左手の障害 | 一上肢の小指の用を廃したもの | - |
すでにある障害について、併合(加重)認定表により併合し、併合番号7号となり、障害等級3級となっているものに、さらに、併合判定参考表の10号に該当する障害と併合判定参考表に明示されていない程度の障害が加わったものであるが併合判定参考表の2級3号—3の「両上肢のすべての指の用を廃したもの」に該当するので、併合認定の結果にかかわらず2級と認定する。
同一部位に障害が併存する場合に生じることがあるが、国年令別表、厚年令別表第1又は厚年令別表第2に明示されているものとの均衡を失うことのないよう認定する。
【認定例1】
左手関節が用を廃し、左肘関節に著しい障害が併存する場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級となるが、厚年令別表第1の3級5号に「一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と明示されており、上肢の障害で3級となるための障害の程度は、原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合認定の結果にかかわらず、障害手当金と認定する。
左手関節が用を廃し、左肘関節に著しい障害が併存する場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
部位 | 障害の状態 | 併合判定参考表 |
左手関節の障害 | 一上肢の1大関節のうち、1関節の用を廃したもの | 8号—3 |
左肘関節の障害 | 一上肢の3大関節のうち、1関節に著しい機能障害を残すもの | 10号—5 |
併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級となるが、厚年令別表第1の3級5号に「一上肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と明示されており、上肢の障害で3級となるための障害の程度は、原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合認定の結果にかかわらず、障害手当金と認定する。
【認定例2】
左足関節が強直し、左下肢が4センチメートル短縮している場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級とななるが、厚年令別表第1の3級6号に「一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と明示されており、下肢の障害で3級となるための障害の程度は、原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合判定の結果にかかわらず、障害手当金と認定する。
左足関節が強直し、左下肢が4センチメートル短縮している場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
部位 | 障害の状態 | 併合判定参考表 |
左足関節の障害 | 一下肢の3大関節のうち、1関節の用を廃したもの | 8号—4 |
左下肢の短縮障害 | 一下肢を3センチメートル以上短縮したもの | 10号—7 |
併合(加重)認定表により併合すると、併合番号7号となり、障害等級は3級とななるが、厚年令別表第1の3級6号に「一下肢の3大関節のうち、2関節の用を廃したもの」と明示されており、下肢の障害で3級となるための障害の程度は、原則として併合判定参考表8号以上の障害が併存している場合であるので、併合判定参考表の8号と9号との障害が併存している場合を除き、併合判定の結果にかかわらず、障害手当金と認定する。
- 総合認定
- 差引認定
【認定例】
厚生年金保険に加入する前に、右手のおや指の指節間関節及び小指の近位指節間関節(PIP)より切断していた者が、厚生年金保険に加入後、事故により右手のひとさし指、なか指及びくすり指を近位指節間関節(PIP)より切断した場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
1により差引認定すると差引残存率は、67%−18%=49%となり、差引結果認定表により認定すれば、障害手当金該当となるが、後発障害のみの活動能力減退率は56%であり、差引残存率より大であるため後発障害の活動能力減退率により厚年令別表第1の3級と認定する。
厚生年金保険に加入する前に、右手のおや指の指節間関節及び小指の近位指節間関節(PIP)より切断していた者が、厚生年金保険に加入後、事故により右手のひとさし指、なか指及びくすり指を近位指節間関節(PIP)より切断した場合。併合判定参考表によれば、次のとおりである。
障害の状態 | 併合判定参考表 | 活動能力減退率前発障害差引活動能力減退率 | |
現在の障害 | 一上肢の5指を近位指節間関節(おや指にあっては指節間関節)以上で欠くもの | 6号—7 | 67% |
前発障害 | 一上肢のおや指を指節間関節で欠き、かつ、ひとさし指以外の1指を近位指節間関節以上で欠くもの | 8号—8 | 18% |
後発障害 | ひとさし指を併せ一上肢の3指を近位指節間関節以上で欠くもの | 7号—4 | 56% |
1により差引認定すると差引残存率は、67%−18%=49%となり、差引結果認定表により認定すれば、障害手当金該当となるが、後発障害のみの活動能力減退率は56%であり、差引残存率より大であるため後発障害の活動能力減退率により厚年令別表第1の3級と認定する。